ソフトウェアの品質を高める上で欠かせないテスト工程では、いくつかの主要なテスト技法が存在します。今回はその中のひとつであるブラックボックステストについてご紹介します。
ブラックボックステストとは
ブラックボックステストとは、システムの内部構造を考慮せずプログラムが仕様通り設計されるかを検証するテスト方法です。システムの内部構造を直接確認することはできないシステムをブラックボックス(中身が見えない箱)に見立ててテストを実行するため、このように呼ばれています。ブラックボックステストはシステムの内部構造を理解していない場合でも、仕様書があればテストを実施できるというメリットがあり、主に機能テストとシステムテストで行われるほか、機能以外のユーザビリティなどのテスト(非機能テスト)でも実施されます。
ブラックボックステストのテスト技法としては主に以下の5種類があります。
1. 同値分割法
同値分割法とは入力条件を類似と見なすことができるグループ(同値クラス)に分割し、テストを実行する技法です。同値クラス分は、出力、内部変数、時間に依存する値(例えば、イベ ントの前後)のほか、インターフェースパラメータにも存在し、テスト実行においては各クラスから代表的な値を使って分析します。同値分割法は単体テスト、統合テスト、システムテストなどのすべてのレベルのテストに適用できます。
2. 境界値分析(限界値分析)
境界値分析とは、仕様条件の境界となる値(境界値)とその隣の値に対してテストする技法のことです。境界値とは、ある範囲の最小値または最大値などの同値分割した領域の端に当たる値です。具体的には「未満」や「以下」などが該当し、こういった境界部分は間違いを引き起こしやすく、不具合が潜んでいる可能性が高いとされます。境界値を狙ってテストすることで、仕様の認識ミスや実装ミスによる不具合を検出することができます。
3. 状態遷移テスト
状態遷移テストとは、入力条件を変更した時、テスト対象であるアプリケーションの状態が変化することを確かめるテスト技法です。この技法の主な利点は、システムの動作をグラフィカルまたは表形式で表現できることです。これにより、テスターはシステムの動作を効果的に理解することができます。
4. 決定表(デシジョンテーブル)テスト
決定表(デシジョンテーブル)とは、表形式で行方向に条件と動作、列方向にルールを組合せる時に出力を評価するテスト技法です。これにより複雑なビジネスロジックのテストが容易になりますが、入力数が増えるとデシジョンテーブルはより複雑になり、テストケースが増加するというデメリットもあります。
5. ユースケーステスト
ユースケーステストとは、ユーザーとシステム間の相互のやり取りを定義した「ユースケース」をもとにテストケースを設計していく技法です。また、よりユーザー観点に基づき、ビジネス要件と機能要件を満たしているかという視点でテストケースを設計することが特徴です。
ブラックボックステストのメリットとデメリット
メリット
ブラックボックステストでは単純に仕様通りに動作するかのみを検証するため、テスターはソースコードを理解する必要はありません。また、ユーザー視点に基づいて開発者とは異なる観点から仕様の違いを明らかにするのに役立ちます。
デメリット
ブラックボックステストではテストシナリオの一部しか実行されないため、どうしてもテスト網羅率が狭くなるというデメリットがあります。仕様のみを確認するだけでは内部の処理が正確に実行されているかどうか把握することはできないため、特にイレギュラーなケースの確認が難しい面があります。
まとめ
今回はブラックボックステストについて簡単にご紹介しましたが、実際のテスト工程においてはブラックボックステストを含め、他のテスト技法をうまく組み合わせながら品質を保証し、顧客のニーズを満たすことが重要になります。